「泳げる霞ヶ浦2020市民計画」は、なぜ策定されたのか

~霞ヶ浦市民協会の目指すもの

堀越 昭(1996年~2008年理事長)

市民参加を成し遂げた世界湖沼会議

 (社)霞ヶ浦市民協会は、1995年、第6回世界湖沼会議が霞ヶ浦で開催されたことを契機に設立されたといっても過言ではありません。当時、茨城県での開催決定にてんてこ舞いの県は、まず、霞ヶ浦や河川などの水質や生物、家庭排水、環境問題などに取り組んでいる多くの団体・個人に声をかけ、会議について説明しました。そして、霞ヶ浦での世界湖沼会議を、今までのような専門家や研究者だけの学術会議ではなく、一般市民も積極的に参加しての意義あるものとして盛り上げてもらいたい、と話しました。それに応えた多数の団体や個人が、市民の立場で参加しようと新しい組織を結成、これが「世界湖沼会議市民の会」でした。
 しかし、私たち一般市民は、世界湖沼会議が何であるかも知りません。早速、一部の市民はイタリアで開催されていた第5回世界湖沼会議を視察・勉強に行き、帰国後に報告会を開催したほか、県主催の説明会も何度も行われました。こうして、組織としての「世界湖沼会議市民の会」が正式に設立するまでの生みの苦しみが大きかった半面、設立後の会員の活躍には目覚ましいものがありました。担当者たちは、それこそ寝食を忘れ、PR活動、会員募集に走り回りました。その功が報われ、第6回世界湖沼会議は過去に開催された同会議とは全く異なり、一般市民を含む約8千人の参加を得ることができたのです。


一般社団法人 霞ヶ浦市民協会と「泳げる霞ヶ浦

 「世界湖沼会議市民の会」は、第6回世界湖沼会議の終了とともに解散することが、当初より決まっていました。しかし、いざその時を迎えると、このまま解散ではもったいない、と反対の声が多数上がりました。これだけ多くの市民・企業・研究者・行政がパートナーシップの精神のもと集結し、各自が各々の責任を自覚し、霞ヶ浦に対し関心を持ったのだから、何らかの形で継続すべきだという意見でした。その意見は解散総会の場で採択され、翌年、霞ヶ浦情報センターと合併する形で、「社団法人 霞ヶ浦市民協会」が設立されました。当時、国内では数少ない「社団法人」格を持つ環境団体としてのスタートでした。
 その設立趣意書には、第6回世界湖沼会議で採択された「霞ヶ浦宣言」の精神を継承・尊重しよう、と書かれています。この精神を、誰もが容易に理解できるよう、私たちは「泳げる霞ヶ浦」というキャッチフレーズを掲げました。「泳げる」という言葉は単に水質の問題だけでなく、「母なる湖」「百万人の湖」としての霞ヶ浦にさらなる関心を持ち、自分の生活の一部にするという意味があります。また後に、そのような市民を「霞ヶ浦市民」と表現しています。」


20年をかけての長期計画

 社団法人の財産は人材です。幸いなことに(社)霞ヶ浦市民協会は多くの人材に恵まれ、そのおかげで、実に多彩な活動・事業を行うことができました。しかし、事業を消化するだけでは将来の展望が見えない、ということもあり、もっと長期間の、そして時代に合った目標を掲げようと検討に入りました。
 私たち人間は、自分たちだけの利便性・安全性・経済性を求め、約30年間をかけて霞ヶ浦に手を加え、瀕死の状態になるまで汚してきました。ならば、今後20年を費やし、本来の霞ヶ浦を取り戻したい、取り戻そう。これが「泳げる霞ヶ浦2020市民計画」の理念です。
 早速、「泳げる霞ヶ浦2020市民計画」を策定するための審議会を組織しました。審議会には協会メンバーだけでなく、幅広い立場からの助言や意見、考えを求める意味で、専門の研究者、環境問題に携わる企業人にも審議委員として参加していただきました。その結果、実に年間総数・数十回の審議会を経て、2001年、「泳げる霞ヶ浦2020市民計画・基本構想~21世紀 霞ヶ浦市民社会を目指して」が策定されました。さらに、その実践部門として翌年2002年に策定したのが「泳げる霞ヶ浦2020市民計画・行動計画」です。この計画をまとめた2冊子は、私たちにとってバイブルのような存在と言えます。この基本構想・行動計画をイメージ化して作成したのが、皆さんもよくご存知のリンゴの木が描かれている「泳げる霞ヶ浦2020市民計画・行動イメージ」図です。目標は霞ヶ浦市民社会であり、そこに20年をかけて辿り着こうというものです。


計画の検証と市民交流会

 20年は長いようで非常に短い期間です。私個人の経験ですが、「まちづくり」に関しては完成までに10~20年などあっという間、一つの商店街の整備に30年かかった例もあります。ましてや、これだけ大きい霞ヶ浦を相手にしているのですから、その大変さは言うに及びません。
 しかし、机上だけで考えて自己満足に陥り、他の団体・個人の批判をするだけでは何の解決にもなりません。行動あるのみです。市民、企業、研究者、行政など、各々の立場でできること、すべきことは、躊躇せずに実行すべきです。実行には当然、その妥当性に対してのバックデータが必要ですが、幸い、(社)霞ヶ浦市民協会には膨大なバックデータ、ノウハウが蓄積されています。私たちは、それを指針として活動してきました。
 さらに当初より、世の中の情勢が変化することを考慮して、5年ごとに計画を検証することを決めていました。特に10年経過した時には、組織をあげて再検討することになっていました。「平成21年度 市民交流会」が、この再検討の場の一つとして該当します。会員の皆様、会員以外の方々にもいただいた貴重なご意見・ご指摘に耳を傾け、今後の行動目標として生かしていきたいと考えています。
 是非、「泳げる霞ヶ浦2020市民計画」へのご理解をいただき、今後ともご支援・ご協力をお願い致します。